声について


少なくとも男声合唱団として全国を目指す場合、僕の考えではまず声の輝きがもっとも重要となる。もし声の輝きが不足している場合、輝くメンバーを追加するか、当面輝きを磨くトレーニングをする必要があると僕は考える。


輝きとは、倍音の豊かさ、美しさであると同時に実音の豊かさでもある。倍音を追求することはきわめて重要だが、それのみにとらわれてしまうと実音の響きが柔らかくなりすぎ、今回のようにデッドな会場にぶつかったときに思うように響かず足元をすくわれてしまう。


実音の豊かさとは、例えば反響の少ない屋外のようなところで歌ってもきちんと倍音が鳴る、ということである。この発声技術はおそらく低音系に重要な技術である。反響がなくても力んだりのどをつめたりすることなく、体全体の共鳴をよく使い、特に胸声の響きを持って実音の響きをしっかり安定させるとともに、鼻腔共鳴や頭声を生かし倍音を豊かに確保することだ。僕の経験では、凡人がこの響きを得るためには正しい方法による途方もない量の反復練習のみが有効である。


低音系の発声の改善とともに、当然テナーの発声の改善も要求される。男声Fのテナー陣の声の輝きはたいへん素晴らしいが、じつはメンバーの本当のポテンシャルを100%引き出しきっているわけではないように僕は思う。むしろそもそもの声の良いメンバーが多いように思う。低音系の発声が改善されれば、テナー系の人たちはおそらくもっとのびのびと広がりのある声で歌えるのではないか。


単純にテナー系の発声の改善、ということももちろん考えられるが、僕の専門分野ではないし不勉強のためここに僕の考えを記すことは控える。


(明日につづく)