音楽について


練習が終わるころにはすっかり関東大会参加の決意も固まっていたが、それは「コンクールに参加したい」ということ以上に、「音楽に参加したい」という感情だった。


練習に参加するまでは、自分の不調が続いていることや、そこから来る自信の喪失、自分の合唱や音楽に対する恐れとあきらめのような感情、それに反するように強くなるコンクールへの執着(それは執念のようなものかもしれない)、それらすべてが自分の中でまさにぐちゃぐちゃに入り混じっていた。


しかし今日の練習でほんとうに久しぶりに良い音楽を体験したことで、これらの未整理な問題は綺麗に整理されたように思う。コンクールとか、自分とかは本質的にはあまり重要ではなく、「良い音楽を演奏する」ということがすべてなのだ。コンクールも、自分も、自分の技術や自信もすべてはそのための手段に過ぎないわけであって、そこは本当に執着すべきところではなかったのかもしれない。


今は、コンクールで成功して全国大会に行きたいのはもちろんなのだが、それと同じように、あるいはそれ以上に、単純に「良い演奏をしたい」という気持ちが強い。そのために自分にできることをシンプルに見つめて実践していきたい。音楽に接する上でもっとも当たり前になくてはならない「良い演奏に対する憧れ」というものを、具体的に思い出すことができた。そのきっかけをくれた男声合唱団Fはやはり僕にとっては奇跡の合唱団であり、活動を支えてきてくれたメンバーのみなさんには本当に深く感謝している。