関谷晋先生について


関谷晋先生がお亡くなりになってしまった。実は僕は関谷先生のレッスンを受けたこともなければ、演奏を聴いたこともないのだが、それでも長年合唱をやっていれば先生が合唱会においてきわめて偉大な方であった、ということは理解しているつもりだ。


関谷先生といえば98年に岩波新書から刊行された「コーラスは楽しい」という本を読んだ。そのころ僕は大学生で、自分の人生でもっとも合唱の練習をしていた時期だと思う。また一応大学生であったので、新書や話題の新刊などは一応チェックしており、「コーラスは楽しい」も刊行されるなり真っ先に購入したのを覚えている。


なんとなく気になり本棚を調べてみたら、やはり初版であった。98年9月とある。


内容は正直よく覚えていない。割と初心者や、そもそも合唱をやらない・聞かない人むけに、合唱の面白さや合唱団の具体的な活動をエピソードを交えて語る内容だったと思う。


中でも覚えているのは、関谷先生が指揮されるとある合唱団がヨーロッパに演奏旅行(コンクールか招待演奏)にいかれた際のエピソードだ。メンバーの一人が勤務する会社の許可を得ることができず参加が難しいという。ところが演奏旅行の直前に、その内容が新聞で報道され良い文化交流であるというような記事が載り、やっと会社に認めてもらい参加することができたという。


このエピソードは当時学生で当たり前のように合唱活動をしていた自分には新鮮で、社会人である以上合唱の活動に打ち込もうとすればするほど、それだけその内容が周りに認められていなければならないのだな〜などと感じたものだ。


もうひとつ覚えているエピソードは、初心者と経験者を混ぜた編成で外国語の曲を演奏したときのエピソードだ。関谷先生は初心者と経験者の差を埋めるため、はじめ初心者だけを対象とした外国語中心の練習をされたという。


しかしその練習はまったく効果をあげることができず、やがて経験者との合同練習になったら初心者の方たちも急に上達して言ったという。うまい人に混ざって初めて上達するということだろう。


それほどよそ様の演奏会に足を運ぶことに熱心でない僕は今まで関谷先生の演奏をお聞きすることがなかったのだが、それでも本日の「私が歌う理由」は是非聞きに行こう!と思っていた。(どちらかというと京都エコーさんの演奏が聞きたかったのだが。)


ところが関谷先生にまさかのことが起こってしまい、チケットもあっという間に売り切れてしまい、結局演奏会に行くことができなかった。


演奏者として本番に臨む際には、「一期一会である」という意識が強く働くが、これは聞く側にとってもある意味同じことで、良い演奏を聴く機会は本当に稀だ。今日の演奏会に行くことができなかったのも悔やまれてならない。もう少し早めにチケットを手配するようにしよう。


そんなわけで、30日の菊華アンサンブルさんの演奏会は早速予約しました。