コール・フリューゲルさんについて


僕もなかなか不勉強で、コールフリューゲルさんの演奏を聴くのは今回が初めてだった。というかこの記事を書くためにリンクを貼って、その際ホームページを拝見して初めて関谷先生の団体だということを知った。男声合唱マニア失格だ。僕も生粋の大学グリー人だったということなのか(笑)


演奏で特にすばらしかったのが三善晃先生の「一人は賑やか」という曲だった。この曲も僕は今回はじめて知った。隣の席にいた縞や君はこの曲を知っていたという。さすがだ。


この曲は三善晃先生の作品らしく非常に難解で複雑な和音・展開が多く、また声部も多く、ピアノも連弾というこれ以上ない内容であった。楽譜を手元に聴くことができたのがとてもよかったと思う。


三善晃先生の曲の演奏でありがちなのは、演奏者側が楽譜や音程に振り回されてしまい全体の構成を見失ってしまったり(そのように聞こえてしまったり)、また一声部でも決して簡単とはいえないメロディーラインであるため歌いこなせていなかったり、そのため全体としての和声や音程が崩れてしまい音楽が聞こえてこない(ように感じてしまう)というパターンだ。


この「一人は賑やか」も、楽譜を見る限りいかにもそういうパターンに陥る危険性に満ち満ちた難易度の高い曲だったが、それに振り回されずコールフリューゲルさんはよく歌っていたと思う。こういう男声合唱曲にありがちな「常に微妙に低めの音程で、上からふたをされたような演奏」にも陥らず、明朗な演奏に聞こえた。


これは相当発声の基礎練習を積んで、安定した実力を土台としてもっていなければできない演奏だ。またコールフリューゲルさんは声も明るめで、複雑な和声進行でも気持ちよく聞くことができる好演だった。この演奏のためだけでも、演奏会のCDを買う価値はあるかもしれない。(めったに演奏されない曲であるということと、それでいてレベルの高い演奏であるため、たいへんな希少価値だという意味。もちろん単純に聴いて楽しめる。)


・お江戸コラリアーずさんについて


好演のもう一団体は「お江戸コラリアーずさん(http://myweb.to/oedo/)」だ。僕の記憶が確かならこの団体は早稲グリをはじめ東西4大学(早稲田、慶応、関学同志社)各グリーのOBが中心になって結成した団であったように思う。


また今日の指揮者の山脇さんは、僕の記憶が確かなら僕の2代上の早稲グリの学生指揮者をされていたかただと思う。いかに早稲グリとはいえ、アマチュアの合唱団の指揮者のかたが卒業後世間で注目される合唱団を結成し、そこで指揮をされているということはすごいことだと思う。その活動に対するモチベーションやお仲間に敬意を感じる。


演奏もとてもよかったと思う。僕が現役だったころの(それはつまり山脇さん世代の、ということだが)早稲グリの演奏は賛否両論で、僕は正直あまり好きではなかった。というのもボリュームはすばらしいが声がとても硬く柔軟な響きというよりはともすればオリャー系だったように感じられた。エンターテイメント性は高かったのでそれはひとつの方向性としてはありだと思うが、単純に僕の好みではなかった。


今日もそういうタイプの演奏なのかな?と思っていたが、本番が始まるとそうではなく当時の早稲グリからは想像もできないくらい丁寧な演奏でびっくりした。曲目がメンデルスゾーンと信長先生だったということもあるが、そもそも当時の早稲グリ系の方々がメンデルスゾーンや信長先生の曲を演奏されるということが僕には想像できなかった。内部では早稲グリ系とうよりも関学同志社の方の流れが強いのだろうか。


まあ内幕はともかく、演奏はとても安定していて声の響きも伸びもよく安心して効いていられる好演だった。とくにメンデルスゾーンの「Beate mortui」は僕も過去演奏したこともあり、今日の演奏がとても丁寧なものであるということが良くわかった。カルテットもとても良かったと思う。


このように大学時代本番をごいっしょさせていただいた方々が今現在好演をされているというのはとても励みになるし、うれしく思う。連絡したり、話をしたりすることはなくても、お互いの演奏を聞きあうことで影響しあったり刺激を交換したりすることはすばらしいしとても面白くて楽しい。僕自身はあのころと比べて進歩しているのだろうか?と若干不安になった。