椿姫3 人に習う、ということについて

yamada1642005-12-25



私の本役であるマルケーゼは、ご存知の方も多いと思うが、端役だ。一人で歌うところは11月19日の公演でもやった、唯一の見せ場である2幕2場冒頭部分くらいである。これはもう暗譜が終わっているし、後は大半合唱と同じ、あとは重唱にまぎれて1,2フレーズあるくらいだ。いかにオペラ素人である私といえども合唱オタク暦は長いわけで、落ち着いて取り組めば暗譜は楽勝であった。


そんなわけでアンダーに命ぜられたジェルモンも読んでしまおう〜と思い楽譜を読んでみると、ところがこちらはまったく一筋縄にいかない。というのも、メロディーというかフレーズが変。歌、というか曲じゃないみたい。節の区切りも不規則だし、何より長い。(2幕1場のヴィオレッタとの二重唱 〜 アルフレードとの二重唱をとりあえず読めといわれていたのだ。)


なれないイタリア語ということももちろんあるが、しかし私とて大学時代にはいわゆるグリークラブに所属し、オペラの男声合唱編曲なども結構歌ったりしたのである程度の免疫はある。しかし問題は言葉ではなく、レチタティーヴォ(正確にはレチタではないらしいが)にあった。


私を知る人は私を「マニュアル人間」などと卑下しているようだが、音楽や技能についてはまさにそのとおりで、自分のいい加減な思い込みやあてずっぽうで練習するのは私は嫌いだ。わからないことは、詳しい人や専門家に聞くなり本で調べるなりして、謙虚に正しい方法を追求するのが筋だと思う。


このような状態を憂慮しある程度先述の8さんと仲良くなっていた私は当然彼女に助けを求めた。この8さんというひとがまた音楽に取り組む姿勢という意味では大変誠実ですばらしい方で、素人の(しかもなぜかソリストになっている)私のまったく無知な問いかけにも至極丁寧に応対してくれる。


私のことを勉強熱心と感じていただいたようで、とても良く面倒を見てくれるのだ。何もわからず一応リコルディ版のヴォーカルスコアと、合唱やマルケーゼが良く聞こえないCDしか持っていない私に、実演のDVD(ゲオルギュー)やらアウラマーニャの対訳やらを貸してくれた。それだけでなく、練習のポイントを具体的かつ丁寧に教えてくれたり、練習の合間に時間があるときなどは練習に付き合ってくれたりもした。


自分の練習に熱心なだけでなく、周りへの配慮というか、全体として良い演奏を作っていくことに労をおしまない8さんの態度は、音楽家として誠に尊敬すべき態度だと思う。


私が所属してる合唱団である混声Rなどに、このようなひとがいたであろうか?ある程度面倒見の良い人はいるが、それでも抽象的なアドバイスをワンポイント程度に施すくらいが関の山であるように思う。パートリーダーのような仕組みがあまり機能していないこともあるが、あまり周りのメンバーには関与しないようにしているように私には感じられる。合唱であるのに!


そういう私自身も、Rの空気になれすぎていたせいもあって、どれだけきちんとした態度で初心者の人に接していたかというとあまり自身がない。かつて、高校時代や大学時代にパートリーダーをやっていたときなどは、パートのメンバーがうまくなるかどうかに、ある意味自分の練習以上に真剣に取り組んでいたように思う。そういう気持ちを今は忘れていたように思う。そしてそのことを思い出させてくれたのも、やはり音楽への情熱を保ち続けている人の具体的な行動であった。