椿姫2 アンダーについて

yamada1642005-12-22



毎週1,2回、平日の夜にある椿姫のソリスト練習に参加するようになり一月ほどになるが、不思議なことがひとつある。ソリスト練習といっても本役の歌い手さんがいつもそろうわけではないことは先日も述べたが、とはいえヴィオレッタやアルフレード、ジェルモンなど主要な役のソリストさんがいないと練習できる場所はごく限られてしまう。(私の役のマルケーゼも、フローラとの掛け合い部分が多いため、フローラさんがいないと練習にならない場合が多い。)


ある日練習に来て、今日はアルフレードは来ているけどヴィオレッタがいないな、と思うと、別の人がヴィオレッタを歌っている場合がある。そうすることでアルフレードの練習を手伝っているということらしい。これをオペラの世界では「アンダー(アンダーキャスト)」と呼ぶらしい。アンダーの人は基本的には本役のひとと同じようにアンダーとして命ぜられた役の歌と歌詞、演技を一通りこなし、本役の人が不在の際には変わりに歌ったり、最悪本番に本役の人が出られなくなってしまった場合に代役として出演するということらしい。


オペラに携わってきた人であれば当たり前のことなのだろうが、本格的にオペラに触れるのは初めてである私にとってはとても新鮮なことのように思えた。


というのも、私は大体の場合において音楽は本番より練習が重要であると考えていたり、練習のほうが好きだったりして、常々「本番に乗せる曲しか練習しない」という合唱的習慣があまり好きではなかったからだ。これはソロについて言うと、「ソロを取った人しかソロを練習しない」ということになる。それではもったいないと思う。自分に本役を歌う力がなくとも、アンダーとしてお手伝いしながら練習させてもらえるという仕組みはとてもすばらしいもののように僕には思えた。


ところがもうひとつ不思議なことがある。このヴィオレッタをアンダーとして?歌っているソプラノの方(ここでは仮に8さんと書きます)は、あるときはヴィオレッタを歌ったかと思えば、別の時にはフローラを、また別の時にはアンニーナを、場合によっては小さい声だがアルフレードまで歌っているのだ。もちろん練習を手伝う意味で歌っているのだが、この人は何でこんなに何でもすらすら歌えてしまうのだろう?ちなみにこの8さんは、先日11月19日の催しでも私の歌うマルケーゼの相手役としてフローラを歌っていただいていた。そのため私はこの8さんがいったい何の役なのかさっぱりわからなくなっていた。


少し打ち解けてきたころに話を聞いてみると、特に役にはついていないということらしい。そもそも今回は合唱団員で参加していたものの、ソリスト練習を手伝って欲しいということで指揮者に頼まれて参加しているらしい。もっともこの8さんも聞いてみれば音大の声楽科を卒業しており、かなりの経験をつんでらっしゃるとのコトで、椿姫もいろいろな役で歌ったことがあるらしい。なるほど。それにしても椿姫のソプラノのほとんどすべてをすらすら歌えるのはなかなか考えられないことだ。


そうこうしているうちに年内最後のソリスト練習になった。11月からの参加で一番素人で足を引っ張っている私だが、「練習出席率が一番良い」という理由で指揮者の先生に買われジェルモンのアンダーもやるようにおおせつかった。8さんを見ていて「練習としてはとても良い!」と思っていたし、年末年始があるので読んでくれば何とかなるだろうと思い、お引き受けした。そのときはまだそれがどれほどのことか良くわかっていなかった。