公演について


一夜漬けながら一通り予習をすませ、本番開場へ。ここでひとつハメだったのは、前日の夜DVDを最後まで見たら相当な時間になってしまい、寝不足でそもそも眠い、ということだ(笑)内容がわからないオペラを見て眠くなるのはもったいないので予習してきたわけだが、これでは元も子もない。


本番が始まると、やはり世界に冠たるチューリッヒ歌劇場の引越し公演だけあって音も舞台も素晴らしい。ただひとつ意外であったのは、舞台演出がかなり現代的にアレンジされていたといことか。初めて見るオペラであったのでごくオーソドックスな演出を期待していたが、しかしこれはこれで面白い。また、昨夜観たDVDは伝統的演出であったため、その対比という意味でも面白い。


歌は・・・素晴らしいの一言に尽きる。本物は違う。特に男爵の低音とロングトーンが素晴らしい。この日の男爵はアレフレッド・ムフという方だったが、人間はこんなに声がでるものなのか・・・とうなる。


見せ場である、二幕の二重唱、三幕の三重唱も素晴らしい。演出も大変丁寧に詳細につけられており、歌の無い部分での元帥夫人の動きがあったりして、それが歌詞の字面だけでは表現しきれていない元帥夫人の憂いを見事に表現している。


そうした数々の演出により舞台の世界にぐいぐい引き込まれていくところに、歌手の素晴らしい歌唱が繰り広げられる。美しく、しかし堅苦しすぎることも無く、喜劇としてのカラーを押し出すことと、作品を通じてのテーマである憂いを表現することが見事に両立されている。


まだまだ書き出せばきりが無いが、本物はやはり違う。欲を言えば、年に数回はこんな公演を観て勉強したいものだ。自分自身と比較するのもおこがましい限りだが、自分の今後の歌に少しでも役立てていければと思う。